-伝統と文化-「信用」と「信頼」 穴水美樹
私の解釈ですが、何らかの物事を作り上げて、出来栄えを良いとし また、いつも人に
良いことをしていることが「信用」である。また、「この先この人なら任せて置ける
と言うことが「信頼」です。例えば、誰もが「普段から貴方はいい仕事をしているね」
と言われたことは「信用」これからも「貴方にお願いします」と言われたのは「信頼」
と思います。もう少し言うと過去が信用、未来が信頼と思います。
今回は、家に関わる職人の世界の話しです。それも今から50年以上前の話しです。
昔はどこの家でも出入りの職人(お抱え・決まった)がいたという話しです。大工さん
・左官さん・水道さん・板金さん・屋根屋さん・経師さん・畳さん・植木さん等など
地域や町内など必ずいました。多かれ少なかれ職人は地域や町内の為 また、
お客様の為にと各家などに出入り職人としてお客様の家や町内を守っていました。
ことがあれば何があってもすぐに伺うようにしておりましたし、また、
「おせっかい」もしておりました。
その家のご主人や奥さんに「家は定期的に手入れをしませんと長くは持ちませんよ」
と教えたり また、昔ですから家の周りが汚ければ近所から何を言われるか
解りませんので、職人さんの方がその家のことを考えて「ああした方がいいとか、
こうした方がいいですよ」と言って気お使っていました。少なくてもどこの家でも、
家や家の周りはいつも綺麗にしておりまし、また、中には出入り職人もいない家も
ありましたが近所の人や知り合いなど、今で言う「小さな親切、大きなお世話」
をする人も多くいました。植木が伸びていれば「俺の知り合いの植木屋がいるよ」
と言い、トヨが壊れていれば「友達に聞いたんだが、綺麗な仕事をする板金屋が
いるよと友達が言っていたよ」とか、また、家に上がれば畳や襖が汚れていれば
「いい畳屋、経師屋を知っているよ」等など、知り合いやご近所の人が職人を
紹介していた時代です。
昔の職人は徒弟制度の社会であったので、親方などは
「お前の恥は俺の恥」と言われ厳しく育てられたものです。それですから職人は
「信用」「信頼」を肝に銘じて仕事をしていたのです。また、お客様とも長い
お付き合いが出来るよう一生懸命仕事をしていたはずです。
「信用」を頂くにはいくつかのことがあります。先ず、第一に「人様からの紹介」
「仕事が丁寧」また、「真面目」そんな中、他人からの紹介ほど強いものはない
はずです。人様に変な人を紹介したら自ら信用を無くしてしまうからです。
人の紹介ほど怖いものは無いはずです。
今の時代は人との繋がりを無くし、近所や他人の接点を無くし また、
他人を信用しなくなっているように思われます。物造りには、人の「魂・思い」
が入っているのです。今の世の中、ただ安価であればいいと言う人も居られますが、
もの造りに決して安価で良いものは無いはずです。それには必ずと言っていう
理由があります。現在の物造りには多くの機械が使われ、また、機械の性能が良く
なっていますが最後の最後の仕上がりは人の手です。そこには作った人の感性
「技術」が物を言うのです。物造りには必ず基本を知らなくては良いものは
作ることはできません。見た目だけで良いのであればよいのですが、作り上
げたものは長持ちしませんし、一時的な物しか出来上がりません。
家は長く使うもの、定期的に手を掛け、出入り職人を持っていることは
良いことです。そこにはお互いの「信用」「信頼」が大事です。
平成29年12月 八王子FM77.5mhz 投稿文より 穴水美樹